神経伝達に電気が関わることはよく知られているが、骨の形成にも電気が関係することはあまり知られていない。それを発見したのは、日本人の世界で誇るべき科学的研究であることも意外と知られていない。骨に圧力が加わると、そこに電位が発生して骨を形成する骨芽細胞と、破骨細胞があつまり、しかるべく自然に対応した形の骨が形成されてくるという。近年、整形外科分野において、電磁場を初めとした物理刺激に関する数多くの研究がなされるようになった。特に骨癒合促進効果に対する有用性は実臨床的に証明されており、超音波や電磁場刺激は骨折治療として薬事承認されており、保険適応となっている。しかし、骨代謝に対する作用機序は依然として不明な点が多い。東京医大整形外科教室では、三浦教授の時代から骨代謝に対する物理刺激の影響について研究が行われている。最近では骨形成の細胞レベルでの実験系を作成し、物理刺激の影響を検討している。今後は、電磁場を用いて刺激時間、頻度、刺激パターンなど様々角度からの刺激を与えることにより、より最適な刺激パターンの評価を行い、臨床の応用を目指す予定である。骨粗鬆症に対して、骨密度を上げるのは薬だけでなく、骨への物理的刺激が重要であることを立証してゆきたい。